相続放棄を自分でやってみた、その手続きや費用や感想など【体験談】

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自分ひとりで相続放棄の手続きやってみて、それが家庭裁判所に受理されて「相続放棄申述受理通知書」が届いたので、その体験談をまとめました。

 

先日、30年くらい会っていない親が亡くなって。いくらかわからないけど借金がありそうだったので、相続放棄の手続きが必要な状況になりました。

相続放棄の手続きを専門家に依頼することも考えましたが、自分でやったらどれくらいの費用と時間がかかるか興味があったので、自分ひとりで相続放棄の手続きをやってみました。

そのときの費用や所要時間や手続きの内容と、感想などをまとめてあります。

ざっくりとした結果としては、私の場合は費用は必要書類と交通費込みで約4100円。書類集めなど手続きにかけた時間はおよそ丸1日。手続き完了から数週間後に相続放棄が受理されました。

自分自身で相続放棄の手続きをすることを考えている方の参考になれば幸いです。

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相続放棄とは

相続放棄とは。Wikipedia(ウィキペディアに)よると次のように説明されてます。

相続放棄(そうぞくほうき)とは、民法上の概念、用語の一つであり、相続人が遺産の相続を放棄すること。

被相続人の負債が多いなど相続に魅力が感じられないケースや、家業の経営を安定させるために後継者以外の兄弟姉妹が相続を辞退するときなどに使われる。

出典:Wikipedia

 

相続放棄とは、法律の民法で「遺産の相続をせずに放棄すること」とされてます。

相続する財産が負債(借金)のほうが多くてマイナスとなる場合や、相続する財産を親族の中でひとりに集中させたい場合などに行われることが多いようです。

私の場合は「相続する財産がおそらく負債(借金)過多で、いくらなのかはよくわからない」というケースでの相続放棄でした。

相続放棄をしないと、いつか借金がふりかかってくる可能性がかなり高い。そしてプラスの財産が出てくる可能性はほぼゼロという状況だったので、相続放棄の必要にせまられました。

 

実際に相続放棄を行うときには、あらかじめ気をつけることがいくつかあります。

ひとつは相続放棄ができる期間は限られていて「相続人であることを本人が知った日より3か月以内」であること。

3か月を過ぎると、相続を承認したとみなされて相続放棄はできなくなります。

その一方で、相続放棄をすると後から財産が見つかっても、相続することは絶対にできません。もしかすると、あとから財産が見つかって後悔する可能性があります。

相続放棄についてよく理解して、そしてよく考えてから行うことをおすすめします。

相続放棄(親子間)の必要書類

相続放棄は「被相続人(亡くなった人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」で手続きをする必要があります。

裁判所の管轄区域は以下の裁判所のホームページで調べることができます。

【参考】裁判所の管轄区域(裁判所ホームページ)

 

私の場合は親子間の相続放棄なので、以下の必要書類を家庭裁判所に提出しました。

私の場合の相続放棄の必要書類

  • 相続放棄申述書
  • 相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 被相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 被相続人の戸籍附票

 

家庭裁判所に行って手続きをすると、窓口で担当者の方に申述書の修正点や必要書類などを指摘してもらえるので、わかりやすい点がメリットです。

しかし被相続人(亡くなった人)が他県など遠い場所に住んでいて、管轄区域の家庭裁判所が遠い場合や、家庭裁判所に行く時間がない場合などには、郵送で手続きを行うことも可能です。

郵送での手続きについては、詳しくは管轄区域の家庭裁判所に相談されるとよいかと思われます。

 

次に、私の場合の相続放棄の必要書類の入手方法・入手場所は以下のとおり。

相続放棄の必要書類の入手方法

  • 相続放棄申述書   → 裁判所のホームページ
  • 相続人の戸籍謄本  → 相続人の本籍地の役所
  • 被相続人の戸籍謄本 → 被相続人の本籍地の役所
  • 被相続人の戸籍附票 → 被相続人の本籍地の役所

【参考】相続放棄の申述関係書式(裁判所ホームページ)

 

相続放棄申述書は裁判所のホームページから印刷して必要事項を記入します。

その他の必要書類は、相続人と被相続人のそれぞれの本籍地の役所(地方自治体)で入手します。

必要書類は役所(地方自治体)に行って入手できますが、遠く離れた場所の場合など、郵送で請求して入手することも可能です。

郵送で請求するときの書式や方法などは役所(地方自治体)ごとに異なるので、詳しくは請求先の役所のホームページなどの情報を参照してみてください。

必要書類は家庭裁判所によって異なる場合もあるので、可能であれば手続きをする家庭裁判所に問い合わせると、より確実かと思われます。

相続放棄を自分自身でするときの費用は?

相続放棄を弁護士や司法書士に依頼すると、必要経費込みで相場は3~5万円といわれています。

自分自身で相続放棄の手続きした場合は必要書類の量にもよりますが費用は3000円前後が一般的で、それと役所(地方自治体)や家庭裁判所への交通費または郵送料がかかります。

 

相続放棄を専門家に依頼した場合と、自分自身で手続きする場合の費用の目安の表がこちら。

手続きの依頼先費用の目安備考
弁護士や司法書士約3~5万円費用は一般的な相場
自分自身約3,000円交通費、郵送費は別

 

私が自分自身で相続放棄の手続きをしたときの必要書類などの費用の詳細がこちら。
(※金額は2021年8月時点)

手続きのときの必要書類など金額備考
収入印紙800円分(400円2枚)800円相続放棄申述書に貼付
相続人(私)の戸籍謄本(全部事項証明書)450円金額は役所ごと異なる
被相続人(親)の戸籍謄本(全部事項証明書)450円金額は役所ごと異なる
被相続人(親)の戸籍附票300円金額は役所ごと異なる
切手(84円4枚、10円4枚)376円

 

私の場合は必要書類などの費用が2,376円で、一般的な費用といわれる約3,000円よりも少し安い金額になりました。

必要書類の金額は役所(地方自治体)によって異なる場合があるので、それにより金額が変わる場合があります。

また祖父母と孫の間の相続放棄など、戸籍謄本などの必要書類が増える場合には費用がより高くなる可能性があります。

そして必要書類の費用の他に、役所(地方自治体)と家庭裁判所までの交通費として、私の場合は約1,700円を使いました。

必要書類の費用と交通費を合わせた金額は約4,100円。これで相続放棄の手続きがすべて完了できました。

 

役所(地方自治体)や家庭裁判所の手続きを訪問でなく郵送で行うことも可能で、交通費と移動時間を減らせることがメリットです。

しかし郵送の場合は書類の記入間違いがあった場合などには、修正のやりとりも郵送なので、数日単位で手続きが伸びることがデメリットとなります。

書類の記入などわからないことがあって直接相談したい場合や、手続きを早く進めたい場合は交通費を使って訪問で手続きを進めるほうがよさそうです。

一方で、手続きについてよく理解していて交通費を抑えたい場合や、役所(地方自治体)や家庭裁判所が他県で遠い場合などは郵送のほうがよさそうです。

状況に応じて訪問と郵送を使い分けるのがよいと思われます。

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相続放棄を自分自身で手続きするのにかかる時間は?

相続放棄の手続きを自分自身でする場合、初めての場合は丸1~2日くらいかかるとみておいたほうがよさそうです。

私の場合は調べ物や手続きや役所への移動などで、丸1日くらいかかりました。

家庭裁判所で手続き後、書類不備などがなければ数週間後に家庭裁判所から相続放棄の受理の書類が郵送で届きます。

 

私の場合は、相続放棄の手続きで以下の作業をしました。

相続放棄の手続きを自分自身でするときの主な作業

  • 相続放棄の手続きの方法を調べる
  • 相続放棄申述書の記入
  • 収入印紙と切手の購入
  • 必要書類(戸籍謄本など)を役所で入手
  • 家庭裁判所へ必要書類を提出

 

相続放棄の手続きの方法はインターネットでホームページをいくつも見て調べました。ほぼ何も知らない状況から始めたので、いろいろ調べてしっかり理解するまでに2時間くらいかかりました。

手続きの方法を調べるのは、知っている人に聞くことができれば時間短縮ができそうです。

 

次に相続放棄申述書の記入に約1時間。特に時間を使ったところは「放棄の理由」と「相続財産の概略」の記入のところでした。

なにしろ親の状況はよくわからず、多分借金がありそうだけど金額は不明、という状況だったので記載内容に悩みました。

なお、相続放棄申述書の記入内容については後述の感想のところで詳しく説明します。

 

収入印紙と切手は郵便局で購入。扱っていればコンビニでも購入可能なので、時間はあまりかかりません。

 

そして戸籍謄本などの必要書類の入手は役所(地方自治体)に行って窓口で入手。

自分の住所地と親の住所地の2か所に行き、さらにその足で家庭裁判所にも行って、必要書類の提出など手続きをしました。

この役所と家庭裁判所への移動や、そこでの手続きにかかったのは合計で6時間くらい。

 

結局、すべての作業を合わせるとほぼ丸1日くらいの時間がかかったという結果でした。

わからないことだらけだったので、相続放棄をするのにほぼ丸1日の時間をかけてましたが、慣れればもっと時間短縮ができそうです。

そして家庭裁判所での手続きが完了して不備などがなければ、その数週間後に郵送で「相続放棄申述受理通知書」が届きます。

これで公的に相続放棄が認められたことになります。

家庭裁判所で何をするのか?

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相続放棄の手続きをするときに、家庭裁判所で何をするのかについてもふれておきます。

 

私が手続きをしたのは東京家庭裁判所。入り口から建物に入ると、まずはじめに空港のような手荷物検査と金属チェックのゲート通過をします。

次に受付で相続放棄の手続きに来たことを伝えて、担当の窓口の場所を教えてもらいました。

平日の午後で他に来ていた人が少なかったこともあり、窓口で番号札をとって待つこと約10分で窓口の方に呼ばれました。

 

相続放棄の手続きに来たことを伝えると、相続放棄申述書や戸籍謄本などの必要書類の提出を求められます。

必要書類を提出するときに書類の不備や不足がないか確認してもらえました。

私の場合は相続放棄申述書の住所記載に間違いがあったので、その場で指摘されたとおりに修正しました。

住所番地の記載は戸籍謄本と完全一致でないといけないそうです(【例】誤:1-1 → 正:1丁目1番地)。

記載を修正するときに署名捺印した印鑑と同じ修正印を捺印する必要があるので、同じ印鑑を持っていくとよいでしょう。

もし同じ印鑑がないと相続放棄申述書に不備があった場合は手続きを進めることができず、二度手間になってしまう場合があります。

(※署名の捺印と修正印の印鑑が違うと、相続放棄申述書を偽造したように見えてしまうそうです)

 

また収入印紙は800円分(400円2枚)、切手は84円4枚と10円4枚を求められました。

この切手は郵送でやりとりする際に使われるようです。なお手続きのときに未使用だった分の切手は、後日届く書類に同封して返してもらえます。

ここで必要な収入印紙や切手が不足している場合は、近所の売店などで購入する必要があります。

 

必要書類や収入印紙と切手がきちんと揃ったら、次に書面を1枚渡されて、その場で記入と署名捺印を求められます。

その書面の名前はうろ覚えですが、確か「照会書」だったとかと。相続放棄を誰かに強要されたりせずに、自分自身の意思で相続放棄することに間違いがないことを確認する書面です。

私の場合は自分自身で手続きしているので問題ないのですが、親類や弁護士などに依頼している場合は本人の意思確認を書面に残すことが重要なようです。

とくに難しい内容はなく、意思確認の記入をして署名捺印するだけです。

これで家庭裁判所での相続放棄の手続きはすべて完了となりました。

 

手続きが完了すると、窓口の担当の方から「受付カード」を渡されました。

この受付カードは仮受付票のようなもので、事件番号や担当係が記載されてます。

相続放棄申述受理通知書が届くまでの間に家庭裁判所に何か質問などあるときには、事件番号を伝えれば調べてもらえるようです。

 

手続きが完了したら、建物から退出します。退出するときには手荷物検査などのチェックはありません。

郵送だと家庭裁判所に行く手間は省けますが、書類の不備や不足があった場合を考えると、慣れない場合は訪問したほうが確実だと、手続きをして感じました。

私の場合は東京家庭裁判所だったのでこのような手続きでしたが、他の家庭裁判所の場合は異なる点もいくつかあるかと思います。

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相続放棄をやってみた感想

相続放棄を自分自身でやってみると、手続きは思っていたよりは複雑でなく、スムーズに進められたように感じます。

親子間の相続放棄だったので、状況が単純だったことも幸いしたようです。

相続放棄を自分自身でやってみた理由は「専門知識がない素人でも相続放棄の手続きができるか?」と「弁護士・司法書士の費用が高くつく」のふたつ。

相続放棄の期限まで、時間の余裕があったこともよかったです。もし期限が近ければ、司法書士などに相談していたと思います。

 

相続放棄の手続きをしてみて苦労したことをいくつか。

相続放棄の手続きの方法を調べてみると、必要書類を収集して家庭裁判所で手続きすることは、わりとすぐにわかりました。

しかし「必要書類は具体的に何なのか?」がわかりづらくて苦労しました。

「戸籍謄本」にもいろいろあったり、聞き慣れない「戸籍附票」などもあり、実際に必要なのはどの書類なのかを理解するまで大変でした。

役所や司法関係で普段から取り扱っている方から見れば当たり前のもののようですが、素人から見ると、わかりづらいように感じました。

また必要書類に「住民票除票」もあったのですが、本籍地と住所地が違うと別々の役所に行くことになるので、戸籍謄本と一緒にとれる戸籍附票のほうにしました。

いろいろと調べて時間はかかったものの、最終的には必要書類がわかったのでよかったです。

 

それともうひとつ苦労したのが、相続放棄申述書の記入について。申述書の「放棄の理由」と「相続財産の概略」の記入で苦労しました。

親には長い間、会っていないので、資産(負債)はまったくわからずの状況。考えた末に、資産(負債)がわからない状況を素直に記入しました。

  • 「放棄の理由」
     →「6.その他(債務が不明のため)」
  • 「相続財産の概略」
     →「資産 不明 万円」
      「負債 不明 万円」

 

このように、やや開き直り気味に「不明」と記入。私の場合は、この内容で家庭裁判所に受理されて、相続放棄が認められたのでよかったです。

もしかすると、別途で私の兄弟が専門家に依頼して相続放棄の手続き進めていたようなので、家庭裁判所側で状況を把握していたのかもしれません。

 

家庭裁判所はこんなことでもないと来る機会はなく、初めて訪れてみて新鮮な印象を受けました。

そして窓口の担当の方がとても親切で、手続きについて適切に指摘していただいたので、とてもスムーズに進みました。

担当の方に「兄弟はいらっしゃいますか。連絡はとりあっていますか。ご兄弟はそれぞれ相続放棄されるのですか。」と声をかけていただきました。

私は「兄弟それぞれ、専門家に依頼するなどして相続放棄をすると思います。」と答えました。

また、相続放棄の手続き中に担当の方から「相続放棄すると、もし後から莫大な財産が見つかっても、相続できなくなりますけど大丈夫ですか。」と口頭でも確認をされました。

「あはは、大丈夫です。そういう話があればいいのですけどねえ。」と笑って答えておきました。

手続きが終わって帰る頃には「さすが裁判所という公的機関、静かでムダがない」という印象を持ちました。それでいて少し温かみも感じました。

 

さいごに相続放棄の費用について。

自分自身で相続放棄の手続きをしてみて、弁護士や司法書士などに依頼した場合の相場と比べると、「かなり安く手続きができた」という印象があります。

また一度でも経験しておくと、次回があった場合にはスムーズにできますし、他の人に助言をすることもできます。

しかし役所や家庭裁判所が他県など遠い場合や、時間や労力を相続放棄に割けない場合などは弁護士や司法書士に依頼しても、十分に費用に見合うのではないかとも感じました。

人それぞれの状況に応じて、自分でやるか専門家に依頼をするかを選ぶのがよいかと思います。

さいごに

自分で相続放棄の手続きをした、費用や所要時間や手続きの内容の体験談でした。

私の場合は以下の結果となりました。

  • 費用は約2,400円(必要書類)+約1,700円(交通費)
  • 所要時間はおよそ丸1日
  • 役所で必要書類を入手して家庭裁判所で手続き

何も知らない状態から、インターネットで調べて必要書類を集めて、家庭裁判所に行って手続きをしました。

家庭裁判所で担当の方に丁寧に教えてもらえて、無事に相続放棄の手続きが受理されてよかったです。

いろいろと大変でしたが、いい経験になりました。そして費用も安くすみました。

これで親の債務(借金)の支払請求があったときには、家庭裁判所から「相続放棄申述受理証明書」を入手すれば、債務(借金)の支払義務がないことを債権者に対して証明できます。

自分自身で相続放棄の手続きをすることを考えている方の参考になれば幸いです。

ここまで見ていただき、ありがとうございました。

雑記
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